退職金の税金の計算方法|手取りが減る不安と申告書の出し方

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更新日: 2026年09月05日

退職金にも税金はかかります。でも安心してください。「退職所得控除」という仕組みがあるため、多くの人は思っているよりずっと少ない税負担で済みます。この記事では、控除額の計算方法、勤続年数別の手取りシミュレーション、そして手取りを大きく左右する「退職所得の受給に関する申告書」の出し方までを順番に解説します。

退職金にも税金がかかる、でも慌てなくて大丈夫な理由

「退職金から税金が引かれる」と聞くと、給与と同じくらい持っていかれるイメージを持つ人もいますが、それは誤解です。退職金は長年勤めたことへのねぎらいという性質があるため、税法上とても優遇された計算方法が用意されています。

具体的には「退職所得控除」という非課税枠が勤続年数に応じて用意されており、控除額を超えた部分にしか税金はかかりません。さらに超えた部分も半分だけが課税対象になる仕組みです(勤続年数によって例外あり)。

会社が正しく計算してくれるのが基本ですが、それには「退職所得の受給に関する申告書」という書類の提出が前提になります。ここを知らないと、本来より多く天引きされてしまうことがあるため、まずこの仕組み全体を押さえておきましょう。

そもそも退職金の税金はどう決まる?「退職所得控除」の仕組み

退職金にかかる税金は、給与や事業所得とは分けて計算する「分離課税」というルールが適用されます。他の所得と合算されないため、税率が跳ね上がる心配が少ないのも特徴です。

まず退職金の額から、勤続年数に応じた「退職所得控除額」を差し引きます。控除額の計算式は以下の通りです。

勤続年数 退職所得控除額の計算式
20年以下 40万円 × 勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)
20年超 800万円 + 70万円 ×(勤続年数−20年)

勤続年数に1年未満の端数があるときは切り上げて1年として計算します(例:9年3ヶ月なら10年)。控除額を差し引いた残りの金額に、原則として2分の1を掛けたものが課税対象の「退職所得」になります。

障害者になったことが直接の原因で退職した場合は、控除額に100万円が加算される特例もあります。個別事情によるため、該当しそうな場合は税務署にご確認ください。

自分の控除額を今すぐ計算する3ステップ

勤続年数を確認する
入社日から退職日までの年数を数え、1年未満の端数は切り上げます。
控除額を計算する
20年以下なら「40万円×勤続年数」、20年超なら「800万円+70万円×(勤続年数−20年)」で計算します。
退職金額と比べる
退職金が控除額の範囲内なら税金はゼロ。超えた分だけが課税対象(原則その1/2)になります。

【勤続年数・退職金別】手取りシミュレーション3パターン

実際の数字で見てみましょう。以下はいずれも概算です。所得税・復興特別所得税(2.1%)・住民税(分離課税分は一律10%)を合わせた金額で計算しています。

ケース 退職所得控除額 課税退職所得 税額の目安
勤続10年・退職金300万円 400万円 0円 0円(非課税)
勤続20年・退職金1,000万円 800万円 約100万円 約15万円
勤続30年・退職金2,000万円 1,500万円 約250万円 約41万円

勤続10年で退職金が300万円というケースでは、退職金がすべて控除額の範囲内に収まるため税金は一切かからず、退職金がまるごと手取りになります。勤続年数が長く退職金が大きいほど税額は増えますが、それでも給与への課税に比べるとかなり優遇されているのが分かります。

実際の税額は各種控除の適用状況などで変わるため、あくまで概算としてご覧ください。正確な金額は勤務先の給与担当や税務署にご確認ください。

手取りを大きく左右する「退職所得の受給に関する申告書」

ここが今回いちばん伝えたいポイントです。退職金を受け取るとき、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出しているかどうかで、天引きされる税額がまったく変わります。

  • 提出した場合:上記の退職所得控除を反映した正しい税額が源泉徴収され、多くの人はそれで手続き完了(確定申告不要)
  • 提出しなかった場合:控除を反映せず、退職金の額面全体に一律20.42%(所得税20%+復興特別所得税0.42%)が源泉徴収されてしまう

例えば退職金1,000万円のケースで申告書を出さなかった場合、20.42%の一律課税だと約204万円も天引きされる計算になります。先ほどのシミュレーションでは税額は約15万円でしたから、その差は歴然です。

この書類は通常、退職手続きの中で会社から渡されて記入・提出する流れになっています。退職時に「何か書類にサインしてください」と言われたら、この申告書である可能性が高いので、内容を確認して必ず提出しましょう。

申告書を出し忘れた・もらえなかったときの対処法

「退職を急いでいて書類の説明をよく聞かなかった」「会社が渡してくれなかった」というケースもあり得ます。その場合も打つ手はあります。

まず源泉徴収票を確認する
退職金についての源泉徴収票を会社から受け取り、20.42%の一律課税で天引きされていないか確認します。
確定申告で還付を受ける
払いすぎた税金は、退職した翌年に確定申告(還付申告)をすることで取り戻せます。
税務署や税理士に相談する
計算に不安がある場合は、最寄りの税務署の相談窓口や税理士に確認しながら進めると安心です。

還付申告は退職した年の翌年1月1日から5年間さかのぼって行うことができます。「もう間に合わないかも」と諦めず、まずは税務署に相談してみましょう。

勤続年数が短い人(第二新卒・数年での転職)が注意すべき点

「数年で辞める自分は、控除なんて大した額にならないのでは」と不安に思う人もいるでしょう。実際、勤続年数が短いと控除額自体も小さくなるのは事実です(例:勤続3年なら控除額は最低保証の80万円)。

さらに勤続年数5年以下の従業員(役員等を除く)については、令和4年分の所得税から追加のルールがあります。退職所得控除を引いた金額のうち、300万円を超える部分については2分の1の軽減が適用されません(300万円以下の部分は従来通り1/2)。

例えば勤続4年・退職金600万円のケースでは、控除額は160万円、差額は440万円。このうち300万円は1/2にできても、残り140万円はそのまま課税対象に加算されるため、長期勤続の人より相対的に税負担が重くなります。

役員等が勤続5年以下で退職金を受け取る場合は、さらに軽減の対象外となる範囲が広くなります。ご自身の立場が該当するか不安な場合は、税務署にご確認ください。

確定申告が必要なケース・した方が得なケース

「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、原則として確定申告は不要です。ただし、以下のようなケースでは確定申告をした方がよい、または必要になります。

  • 申告書を提出できず、20.42%の一律課税で天引きされている(還付が受けられる可能性が高い)
  • 退職した年の給与について年末調整を受けていない(年の途中で退職し、その後再就職していない場合など)
  • 医療費控除や住宅ローン控除など、他の所得控除を使いたい場合
  • 退職後、開業や副業などで別の所得が発生し、あわせて申告する必要がある場合

「年の途中で辞めてそのまま年末を迎えた」という人は、退職金とは別に、給与所得についても確定申告をすることで払いすぎた税金が戻ってくることが多いです。心当たりがある人は忘れずに手続きしましょう。

iDeCo・企業型DCと退職金を同じ時期にもらうときの注意点

会社の退職金に加えて、iDeCo(個人型確定拠出年金)や企業型DCの一時金も受け取る予定がある人は、控除の計算がやや複雑になります。

同じ年、または一定期間内に複数の退職一時金を受け取る場合、退職所得控除額は合算して計算されるルールがあり、勤続期間が重複する部分の調整も必要になります。受け取る順番やタイミングによって手取り額が変わることもあるため、これは個別事情によるため税務署やDCの運営管理機関、加入している金融機関に事前確認することを強くおすすめします。

「退職金とiDeCoを同じ年に受け取ると損をする」と一概には言えませんが、受け取り時期をずらすことで有利になるケースもあります。まとまった金額が動く話なので、慌てて決めず一度専門家に相談してから受け取り方を決めましょう。

退職金の税金と住民税・社会保険の関係を整理

退職金にかかる住民税は、給与にかかる住民税とは扱いが異なります。退職金から天引きされる住民税は、その時点の分離課税で完結し、翌年に繰り越されることはありません。

一方で、退職前の給与にかかる住民税は「前年の所得に対する後払い」という別のルールで動いており、退職後に普通徴収へ切り替わって自分で納付するケースも多くあります。こちらは退職金の税金とは別の話なので、混同しないよう注意しましょう。詳しくは退職後の住民税が怖い理由|前年課税と徴収切替の落とし穴で解説しています。

なお、退職金は原則として健康保険料や厚生年金保険料の対象にはなりません。給与のように社会保険料が引かれるわけではないので、この点は安心材料として覚えておいてください。

損しないためのチェックリスト

  • 自分の勤続年数(1年未満切り上げ)を確認したか
  • 退職所得控除額を計算し、退職金がその範囲内かどうか把握したか
  • 「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出したか
  • 提出できなかった場合、源泉徴収票で20.42%課税になっていないか確認したか
  • 年の途中で退職し年末調整を受けていない場合、確定申告の必要がないか確認したか
  • iDeCoや企業型DCも受け取る予定がある場合、受け取り時期を専門家に相談したか

退職金の税金は、仕組みさえ知っていればそこまで恐れる必要はありません。むしろ「申告書を出したか」という一点が手取りを大きく左右するので、退職の手続きの中でこの書類だけは絶対に見逃さないようにしましょう。退職後のお金まわり全体を整理したい人は、退職後やることリストや辞めたあとのお金カテゴリもあわせてご覧ください。

よくある質問

退職金には必ず税金がかかりますか?
退職所得控除の範囲内であれば税金はかかりません。勤続年数が長いほど控除額も大きくなるため、退職金がすべて非課税になる人も多くいます。
「退職所得の受給に関する申告書」を出さないとどうなりますか?
控除を反映しない一律20.42%の税率で源泉徴収されるため、本来より多く天引きされる可能性が高いです。後から確定申告(還付申告)で取り戻せます。
退職金の税金は自分で確定申告しないといけませんか?
申告書を提出していれば、原則として会社が計算・納税まで行うため確定申告は不要です。申告書を出せなかった場合や他の控除を使いたい場合は確定申告が必要になります。
勤続年数が短くても控除は受けられますか?
受けられます。ただし控除額は勤続年数に応じて小さくなり、勤続5年以下の場合は控除後300万円を超える部分に2分の1の軽減が適用されない特例があるため、税負担がやや重くなる傾向があります。
退職金の税金は住民税にも影響しますか?
退職金にかかる住民税はその場で分離課税として完結し、翌年に繰り越されません。給与にかかる通常の住民税(前年課税)とは別の扱いなので注意してください。
退職金から社会保険料は引かれますか?
原則として退職金は健康保険料・厚生年金保険料の対象外です。給与のように社会保険料が天引きされる心配は基本的にありません。
iDeCoと退職金を同じ年に受け取ると損しますか?
必ず損をするわけではありませんが、控除額の計算が複雑になるケースがあります。受け取り時期によって手取りが変わることもあるため、事前に税務署や金融機関に確認することをおすすめします。
申告書を出し忘れたことに後から気づいた場合、間に合いますか?
退職した年の翌年から5年間は還付申告が可能です。諦めずに源泉徴収票を確認し、最寄りの税務署に相談してみてください。
次の一歩へ

ここまでお疲れさまでした。次は全体の流れを確認したり、自分に合った辞め方を診断してみてください。


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